
飲食店やサロンの出店を検討すると、必ず耳にするのが「居抜き」と「造作譲渡」という言葉です。前のお店の設備をそのまま引き継げば開業コストを大きく抑えられますが、譲渡費用の中身や契約の仕組みを理解しないまま進めると、後から想定外の出費やトラブルにつながることもあります。
この記事では、造作譲渡の基本的な仕組みから費用相場の考え方、契約前に確認すべき注意点までを、東京・首都圏で出店を考える事業者向けに整理します。
この記事でわかること
- 造作譲渡とは何か、居抜きとの関係
- 造作譲渡費用の決まり方と内訳の目安
- 契約前に必ず確認すべきトラブル回避のポイント
造作譲渡とは?居抜き物件との関係

造作譲渡(ぞうさくじょうと) とは、前のテナントが設置した内装・設備・什器などを、次に入居する事業者が買い取って引き継ぐ取引のことです。厨房機器やカウンター、空調、照明、看板などがその対象になります。
居抜きと造作譲渡の違い
「居抜き物件」は、内装や設備が残ったまま貸し出される物件を指します。一方で造作譲渡は、その残っている設備を「いくらで引き継ぐか」という売買の部分を指す言葉です。つまり居抜き物件を契約する際には、貸主との賃貸借契約とは別に、前テナント(または貸主)との造作譲渡契約がセットになるのが一般的です。
造作譲渡のメリット
スケルトン(内装のない状態)から店舗を作ると、内装工事だけで数百万円かかることも珍しくありません。造作譲渡を活用すれば、工事費と工事期間の両方を圧縮でき、開業までのスピードを早められます。前テナントと同業種であれば、設備をほぼそのまま使える点も魅力です。
造作譲渡費用の相場と内訳
造作譲渡費用は明確な定価がなく、設備の状態や交渉によって大きく変わります。一般的には数十万円から数百万円の幅があり、設備が新しく充実しているほど高くなる傾向です。
費用に含まれる主な項目
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 厨房設備 | コンロ・冷蔵庫・シンク・食洗機など |
| 空調・換気 | エアコン・ダクト・グリストラップ |
| 内装・造作 | カウンター・客席・床壁天井の仕上げ |
| 什器・備品 | テーブル・椅子・食器・レジ |
| 看板・サイン | ファサード・袖看板 |
費用の決まり方
譲渡価格は、設備の購入時価格そのものではなく、経過年数による劣化を踏まえた現在価値で交渉されます。前テナントが早く退去したい事情があれば、価格が下がることもあります。逆に人気エリアの好立地では強気の価格設定になりやすいため、相見積もりや専門家の同行で妥当性を見極めることが大切です。
※費用は2026年時点の一般的な目安です。実際の金額は物件・設備により異なります。
造作譲渡契約で確認すべき注意点
費用の安さだけで判断すると、後から大きな負担が生じることがあります。契約前に次の点を必ず確認しましょう。
設備の動作と所有権
引き継ぐ設備が正常に動くか、リース品が混ざっていないかは要注意です。リース契約中の機器は前テナントの所有物ではないため、勝手に引き継ぐことはできません。リース残債の扱いも含め、所有権の所在を書面で確認します。
原状回復義務の範囲
居抜きで借りても、退去時に「スケルトン返し(内装をすべて撤去して返す)」を求められるケースがあります。その場合、引き継いだ造作の撤去費用は自分の負担になります。賃貸借契約書の原状回復条項と、造作譲渡の範囲を照らし合わせておきましょう。
貸主の承諾を得る
造作譲渡は前テナントとの取引ですが、物件の貸主(オーナー)の承諾が必要です。承諾を得ずに進めると契約トラブルになりかねません。仲介会社を通じて、貸主・前テナント・新テナントの三者で条件をすり合わせるのが安全です。
造作譲渡を成功させるコツ
引き継ぐ価値があるかを冷静に見極めることが、失敗を避ける近道です。古い設備を高値で引き継いだ結果、結局買い替えが必要になっては本末転倒です。
専門家とともに現地を確認
厨房や空調は、見た目では劣化が分かりにくいものです。設備業者や内装業者に同行してもらい、修繕や入れ替えにかかる追加コストを事前に試算しておくと、譲渡価格の交渉材料にもなります。
業種の相性を見る
前テナントと業態が近いほど、設備の流用性は高まります。一方で、レイアウトや動線が自店のコンセプトに合わない場合、結局改装が必要になり割高になることもあります。たとえば前が和食店で自店がカフェの場合、厨房の配置やコンロの口数が合わず、結局入れ替えが必要になることがあります。引き継ぐ設備が自店の営業スタイルに本当に合うかを、メニュー構成や席数まで踏まえて見極めましょう。
退去理由を確認する
前テナントがなぜ閉店・退去するのかも、見逃せない情報です。立地や客足に問題があって撤退するケースもあれば、経営者の引退や移転など物件とは無関係なケースもあります。退去理由を仲介会社経由で確認しておくと、その立地でのリスクを事前に把握でき、開業判断の材料になります。
よくある質問
Q. 造作譲渡費用は値引き交渉できますか?
A. 交渉は可能です。設備の劣化状況や、前テナントが早期退去を希望しているかどうかで余地が変わります。相見積もりを取り、修繕に必要な追加費用を提示すると、根拠のある交渉がしやすくなります。
Q. 造作譲渡費用に消費税はかかりますか?
A. 前テナントが課税事業者の場合、原則として消費税の対象になります。契約書で税込・税抜の表記を確認し、総額でいくら必要かを把握しておきましょう。経理処理の方法も含め、税理士に相談すると安心です。
Q. 居抜きでも内装工事は必要ですか?
A. 設備をそのまま使える場合は最小限で済みますが、看板の付け替えや一部レイアウトの変更が生じることは多いです。全く工事不要というケースは少ないため、ある程度の予備費を見込んでおくとよいでしょう。
まとめ
造作譲渡は、開業コストとスピードの両面で大きなメリットがある一方、設備の状態・所有権・原状回復・貸主の承諾といった確認事項を怠るとリスクにもなります。費用の妥当性は、相見積もりや専門家の同行で見極めることが重要です。
東京・首都圏での店舗・テナント物件のことなら、アークホームにご相談ください。居抜き物件の紹介から造作譲渡の条件交渉まで、出店をトータルでサポートします。